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2022-11-23 13:29:00

2014年から2015年にかけて、北朝鮮が日本政府に、(拉致被害者の)田中実さんと(特定失踪者の)金田龍光さんが生存しており、一時帰国させてもよいと伝えてきていると一部メディアが報じた。このことについては国会で何度か質疑が交わされたが、外務省は安倍氏はじめ歴代首相の指示を受けてか、常套文句の「今後の捜査・調査に支障を来すおそれや、関係者のプライバシーを侵害するおそれを考慮する必要があることから、お答えを差し控えたい」と一切答弁を避けてきた。

 

ところが先般、2014年当時の斎木外務省事務次官がインタビューを受けて、「北朝鮮からの調査報告の中に、そうした情報が入っていたというのは、その通りです。ただ、それ以外に新しい内容がなかったので報告書は受け取りませんでした」と認めたことが、朝日新聞デジタルなどで報じられた。さっそく現国会で質疑が行われたが、林外相は相変わらず「差し控える」の答弁を繰り返すばかり。(政府は本当に国民をバカにしている!)

 

横田めぐみさんや有本恵子さんらに比較すれば、田中さんや金田さんはあまり国民に知られていない存在かもしれない。しかし、同じ日本で拉致被害に遭っている(金田さんは政府認定ではないが)のだ。政府は北朝鮮ペースで拉致問題の幕引きを図られるのを恐れているのかもしれないが、日本にとって都合の良い情報だけを選別するのでは、北朝鮮もまともに取り合わないことは明白だ。事実ストックホルム合意を破ったのは日本だ、と主張している。

 

救う会・家族会などが開催した10月23日の国民大集会で、この田中さん、金田さんの件については一切取り上げられなかったそうである(特定失踪者問題調査会ニュースによる)。もしそれが事実なら、救う会に対し、私たちはこう問いたい。

 

北朝鮮に対し「即時一括帰国させよ」と迫っている「全拉致被害者」のなかに田中さん、金田さんは含まれるのか?と。

 

もし含まれるなら岸田首相に、「(キム委員長に)無条件で会いたい」ではなく、「生存するという二人(ほかにもいればすべての人)をまず返せ。その条件交渉をしたい」と言って北朝鮮との対話に入るべきだし、含まれないというのなら、国民に対し「私たちは拉致被害者の選別、場合によっては切り捨てをしています」と、その理由をつけて説明し、その判断の妥当性を国民に委ねるべきである。これ以上、対象者名もその数も不明な「全拉致被害者」という、およそ実現不可能な表現で問題の解決を遅らせてよいものか?

 

「条件を付けずに金正恩委員長と向き合う」と呼びかけ、無視され続けている首相も、「全拉致被害者の即時一括帰国」を叫ぶ救う会も、言葉とは裏腹に、拉致被害者の救出は難しい、しかし国民向けに取り返すポーズは取るとの認識で実は一致しているのではないかとさえ思えてくる。

 

こんな政府と救う会に頼るしかない家族会のみなさんに心より同情する。

 

令和4年11月1日

大阪ブルーリボンの会