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2020-08-29 18:37:00

国(厚労省)は、いわゆる「黒い雨」裁判で一審判決に従わず控訴した。控訴の意味は、国が昭和51年に指定した被ばく援護の対象となる「特例地域」の外で降った「黒い雨」を浴び、がんなどを発症した84人の原告(うち9人は死亡)を「被爆者」として認めないということである。提訴から5年、やっと勝ち取った一審判決に喜んだのも束の間、また長い裁判が続く。原告の一人は「国は自分たちが死ぬのを待っているのか」と憤ったという。
 

原爆投下からすでに75年、「特例地域」の科学的正当性については、もはや何とでもいえる水準の話ではないか。広島地裁は「『黒い雨』にあったかを認定するにあたっては、調査で示された降雨域に単純に依拠することなく、原告らが当時いた場所や供述などの信用性を吟味し判断すべき」として、国が定めた「線引き」の妥当性を否定した。当然ではないだろうか?

 

私たちは北朝鮮が拉致を認め5人を返した2002年から、一人の被害者も取り返せずにいる。なぜこんなに時間がかかるのか?そして、800人以上の日本人が拉致された可能性があるというのに、政府は頑なに、国が認定する被害者は17人のみとして一歩も譲らない。
一度決めた「特例地域」を拡げない、「被爆者」の定義を変えないという上記裁判とよく似ている。

 

敗訴すれば国費を投入することにつながるから慎重な判断を、という官僚たちの思いも分からないではない。しかし、時間が経ち過ぎている。命には限りがあるのだ。控訴断念について官僚が判断できなければ、加藤大臣が安倍総理と膝つき合わせて政治判断すべきだったろう。

 

先回の当欄主張「ドンチョル・キム博士の証言から」について、ある官僚の感想を訊いてみたが、インテリジェンスにかかわる、との一点張りで何も聴けなかった。キム氏とのやりとりはしていない、なぜなら彼にはこういう問題があるからだ、くらいの話を聴きたかった。結局、政府間交渉の所管である外務省が何もやっていないのだろうとしか思えない。

 

総理在任中、毎年、靖国神社の参拝をし続けた小泉総理は、金正日に拉致を認めさせ、5人を取り戻すという結果を出した。引き継いだ安倍総理は第一次政権では一度も行かず「痛恨の極み」と述べ、第二次政権では毎年行くのかと思わせたが、2013年12月26日に一度行ったきり、6年以上参拝をサボっている。

 

謙虚に反省して今年こそ靖国の英霊に会いに行き、国民の命を守る決意をしてきてほしいと思う。

 

令和2年8月13日     大阪ブルーリボンの会